九州大学 総合型選抜II(旧AO) 芸術工学部 芸術工学科 メディアデザインコース の話(7)
おそらく、総合型選抜IIの第2次選抜の実技では、造形工作の上手下手、デッサンの上手下手、は大して問われません。
なぜかというと、メディアデザインコース全体の入学者定員の半分は、一般選抜で選別され、その人たちはペーパー試験一本で評価されて実技は問われないのですから。
だから総合型選抜IIの第2次選抜の配点も、共通テスト500点、実技250点なのです。
あくまでも学力は重視。
共通テストと前期試験のペーパー試験に若干心もとないが、メディアデザインコース志望の意欲の高い人で、造形能力やデッサンにアドバンテージがあれば補える、程度に考えておけばよいでしょう。
ただ、それよりも「メディアデザインコースの総合型選抜IIの実技では、造形工作の上手下手、デッサンの上手下手は大して問われないのではないか」という推測から考えなければいけない重要なことは「では、何が判断されるのか」ということです。
しかもメディアデザインコースの総合型選抜IIでは、入学者定員の半分を総合型選抜IIで選抜します。
これは結構大胆です。メディアデザインコースのある同じ芸術工学部でも、これほど総合型選抜IIによる合格者割合が多い学科はありません。それどころか定員の半分を総合型選抜で取る学科は九州大学はおろか、日本全国でもそうそうないはずです。
学力が問われるのはベースにあるのだろうけど、定員の半分を費やしてまで志願者に求める点って何でしょう?
これにもヒントがあります。
ここで実技で出題される「あるお題」に戻ってみましょう。
「あるお題」は試験会場に行って試験問題が配られ、試験開始の合図があって試験問題を開くまでわかりません。
2020年度の「あるお題」は「多様性」でした。
2021年度の「あるお題」は「虚実」でした。
ん?
いきなり試験会場で唐突にこのような抽象的なテーマが与えられ、それを造形し、それをデッサンし、さらには1000字で論じなければいけないのです。
唐突で抽象的なテーマだから造形工作の上手下手、デッサンの上手下手は大して問われないのではないか、と言っているわけではありません。
公開された情報から、またまた推理、憶測を働かせてみましょう。
受験生が選抜を争うために公開される情報は募集要項です。
これをよく見てみましょう。
九大の芸術工学部の専攻コースは以下の5つがあります。
・環境設計コース
・インダストリアルデザインコース
・未来構想デザインコース
・メディアデザインコース
・音響設計コース
この中で第2次選抜の実技にメディアデザインコースと同じような感じで、造形やデッサンを課しているコースがあって、それは「環境設計コース」と「インダストリアルデザインコース」です。
2021年度の環境設計コースの実技は以下のようなものです。
「ル・コルビュジエ」に関する資料が提示される(読み物か写真か、はたまた別物かは判りません)。それに関する理解を記録する。理解に基づいて与えられた材料を使って立体を制作する。立体を描写する。制作意図を論述する。
2021年度のインダストリアルデザインコースの実技は以下のようなものです。
与えられた材料を使って自ら設定したテーマにもとづいて構成し、それを描画し、なぜそのような構成としたかを文章で説明する。
ここまで書けば「メディアデザインコースの実技では、造形工作の上手下手、デッサンの上手下手は大して問われず、他に重大なことが判断されているのではないか」と推測することが理解できると思います。