九州大学 総合型選抜II(旧AO) 芸術工学部 芸術工学科 メディアデザインコース の話(4)
「志望理由書」の形式が整っている、とは一般的に必ず書かなければいけないことが書いてあるという意味です。
例えば「アドミッションポリシーの理解とそれに対する整合性」など。
志望理由書の書き方の指南書はそこらじゅうにあるので、こんな基本的なことはそっちに任せて、以下、「メディアデザインコースで加点につながると思われる、書いた方が良さそうなこと」について募集要項で配布される様式に沿ってみていくことにしよう。
芸術工学部の志望理由書は3枚。自分の名前と希望するコース名を記入した後、以下を書いていくことになります。
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(1枚目)
「芸術工学科の上記コース(メディアデザインコース)を志望する理由について述べる」
(2枚目)
「自身についてアピールしたい点を述べる(勉学に関する自己評価や、課外活動、社会活動、資格など)」
(3枚目)
「受けた表彰などがある場合は列挙」
「取得した資格や各種の検定の成績がある場合はその最高の等級や得点を列挙」
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1枚目がまさに志望理由そのものなのですが、ここで「なぜメディアデザインコースなのか」を「具体的理由」とともに示す必要があります。
「なぜメディアデザインコースなのか」は言い方を変えれば「他の大学・学科では代わりが効かない九大芸術工学科のメディアデザインコースでなければならい理由」です。
「メディアデザインコースだけでなくワイルドカード的に何でも使える成果」(英検成績とか)は2枚目に書いた方が良いように思います。
以下、ヒントです。
(1)志望のエビデンス
メディアデザインコースでは高校生向けの公開講座が夏にあります。少なくとも2019年と2020年にはありました。
開催形式は、よくある大学の市民講座と同じような感じですが、これに参加すると「受講証」みたいなものをくれます。
これを示すことは、「昔からメディアデザインコースを進路選択としている」ことのエビデンスとなり、「そろそろ受験の進路探しの中で、とりあえず受けてみるか、と気まぐれでやってきた、ぽっと出の志願者とは違う」ことの証拠になります。
(2)コンテンツ創成意欲のエビデンス
志望理由書3枚目の「受けた表彰」に関連するのですが、クリエータコンペへの出品、できれば受賞の記録があればメディアコンテンツ創生意欲のエビデンスとして大きく評価されそうです。
「GEMSTONE」という東宝のクリエーターズオーディションがありますが、それなんかであれば最高レベルのエビデンスのひとつでしょう。
公式サイトに作品を見に行けば判りますが、技術・機材がプアであってもアイデアの勝負で高校生レベルで作れる受賞作品があります。
ここまでレベルの高いコンペでなくても「高校生」「コンテスト」で検索すればいろいろ出てきます。
コンテスト出品はおぼつかない、、、という人でも、自分のSNSでちょっとした作品を公開するのもありでしょう。
いずれにせよ、志望理由書の1枚目で示すべき大事なことは受賞記録ではなくて、意欲なので「コンテンツを制作することを通じて自分が何を考え、得ることができ、成長できたか」を示すことが大事になると思われます。
(3)学習意欲と将来ビジョンのエビデンス
ある意味、これが一番大事かも。
ちょっと長くなりますが。
まずは一般的な話。
多くの受験生は、自分のおおまかな進路、法学とか工学とか決めたら自分の入れる偏差値で一番良さげな大学入って、なんとなく3年過ごして、じゃんけんで入った研究室で与えられた卒業研究やって(理工系は修士まで行けば6年)、就職の時は何十社の会社にエントリーシート送って、最終的に内定もらった一番良さげな会社に入って、何年かたって「俺の人生これでよかったんだっけ?」なんて疑問に思う、という人生が待っていると思います。
私もそうでした。
またこれからの日本の雇用で重要視されるのは、これまで行われてきた「メンバーシップ型の雇用」「横並びの昇進」「終身雇用」ではなくなって、「ジョブ型雇用の中で戦える専門性は前提で持っていて、そのうえでジェネラリストとしてマネジメントで活躍できる」能力になるのが目に見えています。
そのためにも「なんとなくの将来ビジョン」ではなく「将来XXの仕事をやるためには遡って学部・修士・ドクターのそれぞれの時点で客観的に評価されるXXの成果を出しておかなければいけない、自分が学びたいものに近い大学の専門家はXX先生なので、ネームバリューで大学を選ぶのではなく、その先生のいるXX大学でその先生の研究室に入らなければいけない」というロードマップが必要でしょう。
メディアデザインコースの「志望理由書」にもそれが書ければベストだと思います。
「志望理由書」は会社に入るときのエントリーシートや面接と同じです。
「やる気だけは負けません、頑張ります」では「お前何ができるの?うちの会社の利益にどう貢献できるの?なんでお前を給料払って雇わないといけないの?」という評価軸の中では通用しません。
大学も、法人化が進んで世知辛い世の中「この学生を入学させると素晴らしい研究結果を出してくれて大学としての評価が伸びそうだ」とか、入試の選考を行う先生も厳しい研究世界で成果を争う研究者なのですから「この学生をうちの研究室に入れたら、うちでやってる研究の成果が高まりそうだな」と思わせた方がいいように思います。
以上みてきたように、おそらく総合型選抜IIの「志望理由書」で勝ちぬくためには、「そろそろ3年になったから進路を本気で考えるか」では遅すぎるように思います。
「高校生講座への参加」も「コンテンツ制作の経験とその中で得たもの」も「将来の自分像のロードマップを決めておく」のも多分1年やそこらではまとめられない時間が必要です。
適当なきれいごとを「志望理由書」に書いても、
・出願前の付け焼刃
・どうとでも取れることの牽強付会
・無理やりな我田引水
これらは全部バレます。
相手は数えきれない学生を相手にし、数えきれない受験生を評価してきてるのですから。
「いやー、そうはいっても第1次選考で落とされる人って80人志望して10人ぐらいだし、実際少ないじゃん、共通テストと実技で頑張ればいいんでしょ」
本当にそうでしょうか。
興味ある事実として、九州大学の公開している「入学者選抜実施状況」のデータでは、「一般入試(いわゆる前期・後期)」については「合格者最高点・最低点・平均点」が公表されていますが、「AO・総合型選抜II」の実施状況では「志願者・受験者・合格者」の数しか公表されていません。
また先に書いたように総合型選抜IIでは募集要項に「各評価を合わせて 3 段階(ABC)で総合評価する」と書いてあります。
これは何を意味しているのでしょう。